「炎上―吉原裏同心8 」 佐伯泰英 [my favorite]
突然ですが、ちょっと本の紹介をしてみようかな、と思い立ちました(笑)。
私は小さい頃から時代モノが好きで、小学生向け「織田信長」「徳川家康」「豊臣秀吉」に始まって
「平家物語」(知盛が好みでした・笑)やら「徳川慶喜」やら、好んで読んでいました。
中学以降もそれは変わらず、山岡荘八さん、司馬遼太郎さん、吉田満さんなどなど、あまり
「この人の作品じゃないと駄目」というよりは、それぞれの視点の違いも含めて興味深く
読み漁っていました。
で、最近嵌ったのが佐伯泰英さんの時代小説。といっても、上にあげた方々のものとは毛色が
かなり違って、主人公は架空の人物でエンターテインメント性に溢れる小説です。
数本のシリーズが同時並行で走っていますが、江戸時代とはいえ時代がそれぞれに違っていて、
その時代を象徴する有名な実在人物名(吉宗とか)が結構出てくるのでとっつきやすいんです。
そして、すべてのシリーズを通じてワクワク感があり、意外性もあり、そして何より人の情けとか
心の機微が描かれていて、読後感がいいのが私が嵌った理由かもしれません。
しかも、数本のシリーズを抱えているにも関わらず、結構なペースで本が発行されるので、
ファンとしては「読みたい!」という気持ちをすぐに叶えてくれるところも嬉しいところです。
もちろん、シリーズによって若干の好き嫌いというか好みの序列はありますが、佐伯さんの新刊が
出るとそそくさと買いに行っています。
さて、その佐伯泰英さんの最新刊は下記の「炎上―吉原裏同心8 」。
主人公は神守幹次郎と汀女の二人。もともと幼馴染のような関係(今でも女房の汀女を
幹次郎は姉さまと呼ぶんですよね)の二人、汀女が家の犠牲になる形で嫁いだ先で夫にも
理不尽な仕打ちを受けているのを知った幹次郎が、汀女を連れて駆け落ちして夫だった
藤村に追われる。色々な犠牲を払ってようやく吉原という異界に拾われて、会所の用心棒として
生活を送っています。この最新刊では、その神守幹次郎が通う道場に、猿を連れた三人の武芸者
が忽然と現れるところから始まります。男たちは他の道場にも現れて道場破りを繰り返した挙句、
さらに廓の遊女を殺したうえ、金を奪って逃げるという暴挙に出る。幹次郎と吉原会所の男衆が
必死の探索を続けるうちに、吉原を舞台にした江戸騒乱の陰謀が浮かび上がって・・・というお話。
このシリーズは、吉原という独特の世界観が存在する場所を舞台にしているので、余計に人の
心の温かさやどうしようもない切なさを感じさせます。登場人物も様々に入り組んでいるのですが
読んでいるうちにすんなり理解できていくから不思議です。個人的には吉原遊女の頂点に薄墨太夫
の凛とした姿が非常に好きです。今回はタイトルに炎上とあるので、あぁ吉原炎上なんだろうな・・と
思いましたが、炎の中でも毅然として待つ薄墨太夫と、その薄墨太夫を幹次郎が背負って出てくる
ところで、頭の中にその画が浮かんでうーん、綺麗だなぁと思わず唸ってしまいました。
でも、それを見つめる汀女先生(遊女に俳句などの嗜みを教えているので先生を呼ばれている)
の気持ちもよくわかるので、同じ女としてはちょっと複雑ではあります(笑)。
そんなに構えなくてもすんなり読めると思いますので、もし気になった方は是非一作目から読んで
みてはいかがでしょう?ちなみに、義母も佐伯さんの作品に嵌っていることが判明し、新刊のやり
とりをするなど、嫁姑コミュニケーションにも役立ってくれています(笑)。
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